世代を繋ぐ~狛犬~
少し前のこととなりますが、令和6年4月25日(木)に
陶山神社の磁器製狛犬と台座が修復され、神事とお披露目会が執り行われました。この日は天気も良く、晴れやかなお披露目会となりました。
この狛犬と台座は今から137年前の1887年(明治20年)に10代今右衛門が制作に携わり、神事当番町だった赤絵町より奉納されました。
当時の今右衛門窯は、江戸時代の幕藩体制が終わり、御用赤絵師としての藩の保護がなくなった頃です。
伝統の技術を継承することに一生懸命だった10代は本窯を築き、一貫した磁器生産に踏み切り、明治から大正初期にかけて、技術的にも、経済的にも苦難の日々を過ごしていたとのこと...狛犬はその苦境の中で奉納されたと思うと歴史の重みを感じます。
10代今右衛門
今回、狛犬の修復は京都の修復業者様に依頼をし、今右衛門では狛犬の台座の破損した部分の製作に携わりました。
明治期の職人さんの仕事を残し、欠けていた部分のみを生地から作り、上絵付けを施し、はめ込むという流れです。
生地は窯で焼くと収縮し、反ってしまったり、となかなか生地作りの職人さんの思うようにはいかず、
また、上絵付けについても、現代の今右衛門ではあまり見られない上絵具や金彩の色合いが多く、
繊細な色や文様の上絵付けに14代も職人さん達も大変に苦心されていました。
完成した狛犬がこちらです。
指差した部分の陶板が、10代が制作したもの
角の部分が今回制作したもの
10代と14代の100年を超えた共同制作が実現した今、
今後はこの狛犬が、末永く後世へと受け継がれる有田の焼き物の歴史を見守ってくれる事をねがっています。