初期鍋島の名品の千代口である。濃い緑と黄の色絵からは古九谷様式の雰囲気が感じられ、丁寧な染付の筆致、背景の薄瑠璃、きりっと引き締まった変型の形状など、その後の最盛期鍋島へ移り変わる様々な要素を内包した作品である。 また、染付の線書きに関係なく施された緑の上絵は、焼成時に流れたのか意識的なのか判別出来ないが、初期鍋島らしい力強い雰囲気を醸し出している。 (文・14代今泉今右衛門)