円を二つ重ね合わせることによる三日月と兎の組み合わせは絶妙である。兎の背から、肩、顔、目へと向かう曲線の流れは渦巻状に連なり、その方向に沿って兎の毛が一本一本丁寧に染付の線書きにより描かれ、また兎の顔はレリーフ状に盛り上がり、鍋島の技術・意匠の崇高さを感じさせてくれる高台皿である。裏書きは波文様が墨はじきによって描かれ、大変珍しい表現である。 (文・14代今泉今右衛門)