青磁釉と透明釉の掛け分けという技法が多い鍋島の青磁の中で、全面青磁と染付との併用という技法も数点みられる。しかし、素焼生地に染付を施し、青磁釉を掛けたのでは、青磁の厚みによって文様が見えなくなるため、青磁の間に染付が施されている。そのことが藩窯の窯跡の出土の陶片の断面から推察できるが、技法手順としては、青磁釉を掛け、一度素焼してから染付を施し、再度青磁釉を掛け、本焼焼成したものと思われる。また、紅葉の葉脈の白抜きは墨はじきの技法を使ったようにも思え、見た目以上に手の込んだ作品である。 (文・14代今泉今右衛門)