見込みに一輪の椿が描かれた、堂々とした5寸皿である。椿の花は、日本人には特に馴染みが深く、鍋島でも数多く描かれているが、椿のどの品種を図案化したものかは定かでない。椿の背景には、帯状に青海波の文様が、墨はじきの技法が使われ、椿の花を引き立たせるために一役をかっている。また、皿の縁に銹釉が施されており、同形・同裏文様の縁に青磁釉が施された「染付青磁藤袴文皿」、縁に瑠璃釉が施された「色絵瑠璃釉羊歯文皿」と同時期に造られたものと思われ、鍋島の斬新なセンスを見ることが出来る。 (文・14代今泉今右衛門)