ほのぼのとしたタッチで描かれた初期伊万里の皿である。銹釉とは鉄分を含む石を釉石として用い、10%程の鉄分の含有により還元炎焼成するとこのような茶褐色の発色をする。初期の窯跡の山小屋窯に類品の陶片が多く、銹釉の発色も均一ではなく味わい深い作品が多い。上部に一度、鷺の輪郭を線彫りした跡がみられ、多分、足が入らなくなった為、反対方面に彫り直したものとみられ、制作の順序を知る貴重な作品である。 有田では現在でも、川原に足を伸ばして立つ鷺の姿をよく見かけるが、当時、日常の風景として陶工が描いた様子をうかがい知ることができる。 (文・14代今泉今右衛門)