鹿と紅葉が卓越した生き生きとした筆致の染付で描かれた、延宝期頃(17世紀後期)の優品の花瓶である。 中国では、鹿や鶴は千年の長寿を保つ仙獣とされ、「福禄寿」の「禄」と「鹿」の音が通じることからも、寿命・財力を合わせもつとして、古くから中国・日本の工芸品の中で盛んに描かれている。古伊万里でも17世紀後半以降に多く登場し、紅葉とともに描かれることが多い。 (文・14代今泉今右衛門)