十三代の作品の文様は、更紗や唐花などの想像上の草花や、露草やすすきなどスケッチを基にしたものが多いが、江戸期の鍋島の文様を題材にしたものもたまにみられる。中でも浪に桜紅葉の竜田川文は数点みるのみであるが、浪文を墨はじきで表現し、桜と紅葉を赤絵で施し、すっきりとした格調高い雰囲気に仕上がっている。また形状は、鍋島特有の木盃型の高台皿であり、高台は櫛目高台、裏文様は七宝文が描かれた、珍しい作品である。昭和60年前後の作品であり、いちばん油の乗り切った時期と思われる。 (文・14代今泉今右衛門)