十三代今右衛門は学生時代から、マティスやブラックの作調に興味を引かれ、若い頃は抽象的な制作にも取り組み日展にも出品していた。十三代を襲名後も「何か、あの雰囲気で作品が造れないものか」という思いが強く、この作品も、そのような指針のもとに制作したものであり、ブーメランのような幾何学的な文様をいかに取り入れるか苦心したと聞いている。
十三代は、常に新しい作風に挑み、その中から次へのヒントを探していたようである。日本伝統工芸展などでも、「今右衛門さんの今回の作品、また新しい雰囲気ですね」と言われるのが嬉しい評価だったと、常々言っていたのは、そのような作陶姿勢によるものと思える。
(文・14代今泉今右衛門)
|