伸びやかなタッチの初期伊万里の茶碗である。
父・十三代今右衛門の若い頃、博多で古陶器をいろいろと教えていただいた方が、お客様をもてなす際に、古陶器をうまく使われていたのを目にしたということであった。その影響もあり、父は、焼物に興味のある方をもてなす時は、初期伊万里の器を使い、お抹茶にはこのような茶をよく使っていたものである。そのときは、「焼物は割れるものである。もし、人が割ったら、その人に罪をつくってしまう。」と言って、すべて用意、皿洗い、後始末まで自分で行っていたので、現在はそのことは私も引き継いでいる。
平成八年にこの(財)今右衛門古陶磁美術館は開館したが、現在も使っているパンフレットの初期伊万里の茶碗として、父の好みとして、この染付柳文茶碗を掲載している。その後数年経ち、父がこの柳の染付の線のすばらしさをしみじみ語っている姿を見、納得したものである。
(文・14代今泉今右衛門)
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