頭の部分がはずれ、そこに洋酒などを入れ、紅毛人がまたがる樽にある穴の部分に蛇口か何か付けてお酒を振舞うための酒瓶である。原型はデルフトの酒瓶であると思われる。顔の表情も欧州人であり、ユニークな輸出伊万里である。
この古陶器が手に入った経緯は、昭和40年頃、十二代今右衛門が今泉元佑氏(十二代の弟)に鍋島の古陶器を取り置きしておくように御願いしていたという。後日訪れるとその古陶器は売ってしまっていた後で、十二代は「あれほど言ったのに」と怒り、すぐ手の届くところにあった色絵紅毛人酒瓶を握って持って帰ってきたということである。
当時この作品の産地・年代は不明であったが、後年、有田郵便局の建て替えに伴う赤絵町遺跡の発掘調査の際、同じものの陶片が出土したことから有田産と判明したものである。
そのときの鍋島はどの絵柄か判らないが、今思うとこちらの方が良かったかもしれない。実直な性格の十二代らしいエピソードである。
(文・14代今泉今右衛門)
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