表面は陽刻だけ施された白磁の変形皿である。文様が描かれている裏面と高台描きは初期鍋島の雰囲気を感じさせる趣であることから、鍋島の初期のものということは明らかである。しかし、父・十三代は、これが白磁の変形皿であるのか、色絵を付けるための生地であるのか判別できずにいたが、その後、同じような表面の白磁の鍋島の伝世品を数点見るにつけ、白磁として造られたことに確信を持つようになってきた。
父が蒐集した古陶器にはそのような判別が難しいものが多々ある。その中には、通常の古陶器論と異なるものもあり、解決することなくこの世を去ったが、今後引き継いで少しでも疑問を解決していきたいと思っている。
(文・14代今泉今右衛門)
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