有田から東部に位置する百間窯で造られたものと思われる。当時、朝鮮半島から伝わった三島手という技法の鉢である。三島手というのは、陶器の生地にくぼみをつけ、その上に粉引(白化粧)を塗り、その後表面の粉引を削り(あるいは拭いて)取り、くぼみに入った粉引の白で文様を表す技法である。初期伊万里の頃の作品らしい、ほのぼのとした作行である。
最近気付いたことであるが、三島手にも型押しによるものと、彫りによるものがあるという。先日、九州近世陶磁学会の折、滋賀県の研究者の方が「今右衛門さんの美術館に、彫り三島の陶片があると思いますが、寸法図らせてもらえませんか」と。三階の陶片を見せるうちに、この鉢のことを思い出し、よく見てみると、彫り三島であった。型押しによるものよりも、彫り三島の方が珍しいという。それまで、何気なく見ていたが、教えてもらった後よく見ると、確かに彫り三島の方が味わいがある。何か得したような、嬉しい気分で今回紹介させていただいた。
ちなみに、金継ぎのところの型押しによる三島手の部分はよび継ぎ(他の陶片を付けること)であり、その雰囲気もほのぼのとし、急に愛着がわいてきた作品である。いつもいろんな方から教えていただき、喜びまでいただき感謝している。
(文・14代今泉今右衛門)
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