古陶磁の陶片というのは大変魅力のあるものである。(財)今右衛門古陶磁美術館の3階には、初期伊万里と鍋島の窯跡からの陶片を多数展示している。この陶片を見るために来館される方もおられる程のコレクションである。陶片はどんな小さなものでも、当時の職人の息吹や、割れる前の姿が想像出来、その中には伝世品として見たこともないものも多く、夢が広がるものである。
数年前であったが、ある有田の方が珍しい陶片を持っているので見てくれと言われた。それは銹釉の掛け分けの陶片であったので、「美術館の3階にそれと似た陶片があるので比べてみましょう
」と言い、この写真の陶片と比べてみた。
するとほぼ同じ陶片であったので、繋げてみるとピタッと繋がるのであった。一瞬ゾッとする感覚をそのとき皆おぼえたが、400年ぶりに陶片が繋がった瞬間であった。今思い出しても、驚きのゾ
ッとする瞬間であった。
(文・14代今泉今右衛門)
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