17世紀中頃の初期色絵の変形皿である。この皿は、平成13年10月上旬、ある古美術商の方が数点持参された中の一点である。
その日の夜、父・十三代に見せたところ、はっきりしない返事だったので、「この皿好き?」と聞いたところ、「古陶器を好き・嫌いで見るもんじゃない」と強い口調で叱られた。その数日後、父は他界したが、父から叱られた最後の言葉になった。
生前、「自分で経験して気が付かないと、いくら人が言っても無駄だ」と言ってあまり叱ることがなかった父であったから、「好き・嫌いでみるもんじゃない」と言った言葉は自分の中で大変新鮮であった。
この言葉は古陶器のことだけではなく、すべての事を指して言ったのではないかと今さらながら思っている。
(文・14代今泉今右衛門)
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