リズミカルな笹をモチーフとした、現代的な構図の後期鍋島の尺皿である。
父・十三代の話である。かつて今右衛門古陶磁参考館として、特別に依頼のあった方のみ開館していた頃のことである。民芸に傾倒していた評論家の方が来館されたとき、最盛期の鍋島や古伊万里をお見せしたら、こういうのは本当の美しさではないと、批判のみ語って帰られたという。そしてその後、民芸の浜田庄司氏が来られたとき、父は「また、批判されるのだろう」とあきらめていたが、浜田氏は鍋島の、特にこの色絵笹輪文皿に対して「どうして若い人は、こんなすばらしい構図を参考にして勉強しないのだろう」と評価されたという。
そして、ある一つのジャンルで秀でた人は、大きな幅広い美意識を持っているものだと語っていた父の話を思い出す笹輪文皿である。
(文・14代今泉今右衛門)
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