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古陶磁コラム  
2007年7月

色絵朝顔文変形皿 

鍋島様式・17世紀後期
イメージ

 色絵朝顔文変形皿。鍋島の高台皿の中で、私が最も好きな作品である。ほのぼのとした中に崇高な品格が感じられ、これを制作した人の人間性まで伝わってくるような、何物にも変えがたい雰囲気である。
 かつて、ある親しい知人から「展覧会などの会場で、自分の一番好きな作品を探すことを繰り返すと、美意識の訓練になるよ」と言われたことがある。それではということで、知人の個展や美術館の展覧会でそのことを実行してみた。すると様々な事に思い悩むことに気付く。「自分はこれが好きだけど人はあまり興味を持っていないみたい」だとか、「これを選ぶと笑われるんではないか」とか、数点選ぶ場合と比べ、一点に厳選する段階でいろいろなことが頭の中で渦巻く。またこれが自分のお金を使って一点買うということになると更に思い悩む。確かに自分の性格まで含めた美意識の大きな訓練である。
 現在、私が最も好きな作品がこの変形皿である。しかし数年後、好みがどのように変わっているか自分でも楽しみである。

(文・14代今泉今右衛門)


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