鍋島の、端正な発色の長四角皿である。
父はかねてからお客様をもてなす器として、自分のコレクションの初期伊万里・古伊万里・鍋島を使っていた。求める際も、「これは盛鉢に使えるな」とか、「これは銘々皿として使うにはもってこいだ」とか言いながら購入を決めていたのを思い出す。この皿も十枚揃っていたし、「何にでも使える形だな」と言いながら求めたものであるが、ある時、お客様をもてなす器として、お刺身の向付に使ったが、私共の台所のものが間違って、お料理屋さんの器だと思い返そうとしたエピソードを持つ。そのくらい、見方によっては何の変哲もない長四角皿である。
ちなみに、この皿を持ち込んだ古美術商もそんなに魅力を感じず、鍋島とは思えず古伊万里の器か明治のものか迷っていたようで、お陰様で、比較的廉価で手に入ったことも思い出す。
(文・14代今泉今右衛門)
|