鍋島らしい斬新な意匠の高台皿である。この皿は、平成7・8年頃、父・十三代が購入したものである。父は若い頃から、鍋島の色絵紐文皿の構図に範を得、かるかや・麦・笹などをモチーフとして円周状に周る構図の作品を主に制作していた。その構図は、その後も、十三代の代表的な構図として生涯を貫いた評価の高い構図である。
そのため父は、この皿をひと目見るなり、「自分は古い鍋島の紐の文様から麦の文様を創作したけれど、後世の人が見ると、この鍋島の麦文皿を参考に造ったとしか思われないだろうな」とつぶやいていた。また「どの時代も考えることはあんまり変わらんな」と言うと同時に、「自分の鍋島における美意識は正しかったんだな」と改めて認識していたことを思い出す。
また後年の考古学の発掘で、京都の御所の発掘調査から大量のこの染付麦文皿の陶片が見つかり、どのような経緯で納められたのか今後の研究に期待したいものである。
(文・14代今泉今右衛門)
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