水草と流水が瑞々しく描かれ、水草の赤絵と染付のぼかしが絶妙であり、鍋島の意匠力が感じられる「夏」の高台皿である。
以前、父・十三代今右衛門は、どこかの美術館でこれと同じ高台皿を目にし、「いいなあ、すばらしいなあ、こんな作品がうちの美術館にもあればいいなあ」と思い、家に帰ってみたら、美術館にあったという。当時は、写真に撮ってリストを作るなどしていない頃で、代々数多く蒐集された古陶器をすべて認識するに至らなかったようである。
また、十数年前、パリの三越エトワールにて「色鍋島展」が企画され、美術館の方と出品作品を選別する際、選んだ作品が今右衛門古陶磁美術館所蔵と明記されているのを見て、「これ、うちにありましたっけ」と度々父が言うにつけ、美術館の方が大笑いされていたと、少し照れながら言っていた姿を思い出す。
(文・14代今泉今右衛門)
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