黄釉の発色もすばらしく、またその中に映える獅子と牡丹の色絵も美しい五寸皿である。
この皿はかつて十二代の知人が所有されていたという。吉祥文様の獅子と牡丹、そしてその構図のすばらしさ、そのような理由から、当時、白磁の中に獅子と牡丹が染付と色絵にて描かれ、八角の高台の銘々皿として造られたと聞く。形状も見込みに丸の窪みがある形と、八角のフラットな形の二種類ある。平成二年私が有田に戻ってきた頃も、よく見かけた皿であるから、かなりの数が造られ賞びられたことが類推される。そのような経緯の作品であるから、平成10年頃、十二代の知人から買ってもらえないかと十三代に打診があったときは、無条件にて先方の言値で十三代が購入したことを思い出す皿である。
最近、色鍋島今右衛門技術保存会の仕事として、十一代や十二代の優品の復刻の作品の制作に取り組んでいる。この黄釉色絵獅子牡丹文皿もお正月らしい吉祥の文様であるから、今年の年末に向けて久々に造りたいと思っている。
(文・14代今泉今右衛門)
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