2009年05月
天目釉盃 中国
十数年前、東京のアンティークショップにて求めた天目釉の盃である。その店の方が言うには、沈没船から引き上げされた中国で造られた古陶器ということで、確かに釉調は深みがあり綺麗であったが、高台部分に貝が多数付着していた。当時、有田の窯業技術センターにおいて試験制作などをしていたため、購入後、その話を窯業技術センターのある方に話すと、「貝は石灰質であるから、ある薬品に漬けるとすぐ取れるよ」とのことだった。持参すると、作業をしているあっという間に「取れたよ」と持ってこられた。貝が付着していたときは、水平に置けないほどの付着であったが、貝が取れて綺麗になったはいいが、古色の味がなくなったようで少し残念であった。しかし、少し大ぶりであるが、今でも盃として時折愛用しているものである。
(文:14代今泉今右衛門)