2009年07月
瑠璃釉ぐい呑 古伊万里様式 17世紀前期
初期伊万里の瑠璃釉の珍しいぐい呑である。
初期伊万里のなかで瑠璃釉を用いた香炉はよく見かけるが、ぐい呑の形は大変珍しい。そして、このぐい呑は、瑠璃釉の発色をよく見せるためか、白化粧をした上に瑠璃釉が施してある。
父・十三代は、初期伊万里のラフな雰囲気をこよなく好み、晩酌などのとき、それらを酒器として愛用していた。この瑠璃釉ぐい呑を古美術商の方が持ってこられたとき、父が思っていた以上に高価だったが、「これは非常に珍しいし良いものだから戴くとしよう。しかし、高すぎるので半値位の値段だと思って使うことにしよう」と言っていた。そう思わないと使えなかったらしく、その後出番の多いぐい呑の一つとなった。
嬉しそうに使っていた父の姿を思い出す瑠璃釉のぐい呑である。
(文:14代今泉今右衛門)