コラム

2012年04月 青磁盃 鈴木治作
青磁盃 鈴木治作

数年前、日本橋の三越の美術部のショーケースに展示してあったものを求めた盃である。
襲名前、知人とお酒の会を度々企画していた。その会でいただくお酒はほとんどが日本酒の冷酒であり、当時そのときに使う酒器として造っていたものはほとんどが盃型であった。お酒というものはどうも酒器の形で味が違うようである。少なくとも盃とぐい呑では味が異なるように感じる。その理由として、盃ではお酒が口になだれ込むが、ぐい呑では呑むとき吸わなければならないことが挙げられる。また口部のそり具合とか厚さも味に影響を与えるようである。そのこともあり当時は盃型の方が冷酒が美味しく感じられ盃型ばかりを試行錯誤しながら造っていた。
この盃は、初夏、爽やかな夕刻に、さっぱりした冷酒をいただくときに使いたいと思っている。

(文:14代今泉今右衛門)